消防官Ⅰ類の論文試験対策
令和7(2025)年度の採用試験から、論文試験の字数・時間はこれまでの「800字以上1200字程度/90分」から「600字以上800字程度/60分」に削減されました。答案を書く練習は必ず新しい制限字数・時間(600~800字/60分)を想定して行ってください。さて、近年の過去問(課題)は以下の通りです。
東京消防庁消防官Ⅰ類・論文試験 近年の課題
・多様性を尊重する職場を実現するために、組織としてどのような取組をすべきか、東京消防庁に限らず一般的な組織を前提として具体的に述べよ。(令和7年2回目)・東京の地域特性をあげ、都民が安心して暮らせる都市の実現に向けて、東京消防庁が推進すべき取組についてあなたの考えを述べよ。(令和7年1回目)
・消防職員に高い倫理観が求められる理由をあげ、消防職員として都民の信頼を得るためにあなたが取り組むことを述べよ。(令和6年2回目)
・都民が東京消防庁に期待することをあげ、その期待に応えるために東京消防庁が行うべき施策についてあなたの考えを述べよ。(令和6年1回目)
・東京消防庁の職員に求められる倫理観や規律の遵守が求められる理由についてあなたの考えを述べよ。(令和5年2回目)
・消防職員の使命についてあなたの考えとその達成に向けてあなたができることを述べよ。(令和5年1回目)
・今後の社会情勢をふまえ質の高い行政サービスを提供するために、消防官としてあなたが取り組むことを述べよ。(令和4年2回目)
・都民から信頼される消防官となるためにあなたが実践することを具体的に述べよ。(令和4年1回目)
・デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現が人間社会にどのような影響を与えるのか、あなたの考えを具体的に述べなさい。(令和3年)
・社会人として必要なものを3つ挙げ、それを身に付けるためにあなたが今後どう取り組んでいくのか具体的に述べよ。(令和2年2回目)
・下の資料(省略)から傾向を読み取り、行政機関が発信する情報を都民に広く周知するための効果的な方法を考え、具体的に述べなさい。(令和2年1回目)
・資料「主な出火原因別火災件数」(グラフは省略)から読み取れる課題と対応策について、あなたの考えを具体的に述べなさい。(令和元年2回目)
・資料「救急車を呼んだ理由」(グラフは省略)から読み取れる課題と対応策について、あなたの考えを具体的に述べなさい。(令和元年1回目)
・資料「最近1年間で防火防災訓練に参加したことがない最も大きな理由」(グラフは省略)から読み取れる課題を2つあげ、その対応策についてあなたの考えを具体的に述べなさい。(平成30年2回目)
・資料「新規学卒者就職率と3年以内離職率【大学】【高校】」(グラフは省略)から読み取れる課題を2つあげ、それぞれの対応策についてあなたの考えを述べなさい。(平成30年1回目)
・資料「高齢者人口及び割合の推移(昭和25年~平成28年)」(グラフは省略)から読み取れる問題点をあげ、その対応策についてあなたの考えを述べなさい。(平成29年2回目)
・資料「家具類の転倒・落下・移動防止対策を実施していない理由」(グラフは省略)から読み取れる問題点を2つあげ、それぞれの対応策についてあなたの考えを具体的に述べなさい。(平成29年1回目)
・組織において、個々の有する能力を発揮するために大切なことを2つあげ、あなたがどのように実践していくのか具体的に述べなさい。(平成28年2回目)
・先般発生した、平成28年熊本地震における災害について、あなたが問題と感じることを2つあげ、その解決方策について述べなさい。(平成28年1回目)
・組織内でのコミュニケーション不足が組織全体に与える影響をあげ、コミュニケーションを活性化させる方策について、あなたの考えを述べなさい。(平成27年2回目)
・住民の防災への意識を高めるための現状の課題をあげ、消防職員としてどのような取組みが必要か、あなたの考えを述べなさい。(平成27年1回目)
・少子高齢化が社会に及ぼす影響をあげ、それに対する消防行政の取組みについて、あなたの考えを述べなさい。(平成26年2回目)
・都市における国際化の進展が社会に及ぼす影響をあげ、それに対する消防行政の取組みについて、あなたの考えを述べなさい。(平成26年1回目)
・あなたが今までに最も困難だと感じた経験から学んだことをあげ、それをこれからどのように活かしていくか述べなさい。(平成25年2回目)
・さまざまな情報を収集・発信することが容易にできる現在の社会環境のメリットとデメリットをあげ、それについてあなたの考えを述べなさい。(平成25年1回目)
・人間関係をよくするために、あなたがこれまでに行ったことと考えを述べなさい。(平成24年2回目)
・情報の共有化の必要性について、あなたの経験と実績を踏まえて、考えを述べなさい。(平成24年1回目)
・東京消防庁に都民が期待していることを挙げ、消防官として、あなたはどのように取り組むのか、考えを述べよ。(平成23年2回目)
・社会におけるコミュニケーションの必要性を挙げ、あなたが持っているコミュニケーション能力を消防官としてどのように活かしていくのか述べよ。(平成23年1回目)
・都民に信頼される消防官になるために、どのように取り組むのか、あなたの考えを述べよ。(平成22年2回目)
・東京をより安全な街にしていくために、あなたが消防官としての立場で取り組みたいことを具体的に述べよ。(平成22年1回目)
消防官Ⅰ類論文にむけた準備のポイント
Ⅰ類の論文課題は時期によってかなり変化します。最近は「あなたが消防官として取り組むこと/実践すること」といったような、きわめてオーソドックスな出題が続いてきましたが、最新の令和7(2025)年度2回目問題ではガラリと変わり、「組織のあり方」を問うものになりました。(ちなみに、この系統のテーマは平成27~28年(2015~16年)頃の2回目試験に出題されていたテーマの延長線上にあるものなので、まったく新しい出題というわけではありません。)これまでを振り返ると、平成29(2017)年度から令和2(2020)年度にかけて、グラフを読み取って論述するというスタイルの出題が7回連続しましたし、それ以前もさまざまなタイプのテーマが出題されています。これまでの出題傾向をふまえて、留意すべきことを以下に列挙しておきましょう。
◆「消防官として取り組むこと」「東京消防庁が進めるべきこと」や「消防の使命」「消防官としての職業倫理(職業観)」に関する答案は完璧に書き上げ、再現できるようにしておく。
最近の出題を見ると、こうしたタイプがねらわれやすいことは間違いありません。自分なりの決定版を事前に書き上げておき、本番ではそれをアレンジして答案を作成できるように準備しておいてください!
◆「組織のあり方」をめぐる課題に関する答案も積極的に書き上げておく。
最新の令和7(2025)年2回目問題で出されていますので、無視することはできません。同じ系統に属する過去問として、平成27(2015)年2回目・平成28(2016)年2回目の課題が挙げられます。「コミュニケーション」「チームワーク」「情報共有」「士気(モチベーション)」「規律」……などさまざまなテーマを想定し、「組織の一員として自分はどう取り組むか」「組織はどうあるべきか」をじっくり考え、文章化しておきましょう。
◆最近の社会環境の変化をめぐる主要な論点について整理しておく。
令和3(2021)年度に「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が出題されています。以前には「少子高齢化」「グローバル化(国際化)」などに関連した出題も。社会環境の変化に目配りした論述が求められる可能性も想定しておくべきでしょう。
◆とくに東京が直面する課題について整理しておく。
令和7(2025)年1回目試験ではずばり「東京の地域特性」について言及するように求められました。これまでにも東京ならではの事情を考慮すべき課題はときおり出されていますから、現在、東京という巨大都市が直面している課題については事前にまとめておくとよいでしょう。(たとえば首都直下地震への備え、超高齢化・グローバル化への対応など。)
◆グラフ、統計資料の読み取り形式にも目は通しておく。
平成29(2017)年以降、7回連続で「グラフ読み取り」形式が出題されました。今後はしばらく出題されない可能性が高いですが、万一出題されても戸惑わないようにしたいですね。グラフや統計資料から傾向を読み取り、具体的な対策をまとめる練習も(軽くで構わないから)やっておくことをおすすめします。
◆自らの経験に基づいて述べるタイプの答案も作っておく。
Ⅰ類の論文では「自分の経験に基づいて述べよ」という出題はしばらくありません。しかし、令和4(2022)年のⅡ類の論文ではずばり「今までの経験を踏まえて」と指示されています。ふりかえると、Ⅰ類の論文でも、平成25(2013)年までは具体的に自分の経験を述べさせるテーマはちょくちょく出されていました。「自分自身の経験」→「そこから学んだこと」→「それを今後、消防職員としてどう活かすのか」という展開は公安系職種の論文ではわりとよくあるパターンですから、念のため「自らの経験に基づく」答案も準備しておくと安全でしょう。
付記:Ⅱ類の論文について
*Ⅱ類採用試験はなくなりましたが、Ⅰ類採用試験の出題傾向を考える一つの材料にはなりえるので、Ⅱ類の過去問も以下に挙げておきます。
・東京消防庁の職員として大切だと思うことを、今までの経験を踏まえて述べなさい。(令和4年)
・官公庁がソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を積極的に活用することの利点とその活用方策、さらにその際に注意すべきことを具体的に述べなさい。(令和3年)
・あなたの経験から「失敗を糧に成長できた」と考えられる事柄をあげ、今後当庁で仕事をしていくうえでそれをどのように生かしていくのか、あなたの考えを具体的に述べなさい。
(令和2年)
・職場におけるチームワークの重要性とチームワークの醸成に対する取り組み方について、あなたの考えを具体的に述べなさい。(令和元年)
・SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)が社会に与える影響についてメリットとデメリットを挙げ、それに対するあなたの考えを具体的に述べなさい。(平成30年)
・都民から信頼される公務員になるために、あなたが必要だと考えることを2つあげ、その理由を具体的に述べなさい。(平成29年)
・資料「日本の人口推移」から読み取れる内容について、あなたが感じる問題点を2つあげ、その問題点に対してどのような取組みが必要か、あなたの考えを具体的に述べなさい。(平成28年)
・消防職員として働く上で信頼関係の重要性をあげ、信頼関係を築くためにあなたはどう取組んでいくのか述べなさい。(平成27年)
・コミュニケーションの重要性について、あなたが経験したことを踏まえて述べなさい。(平成26年)
・東京消防庁の一員として働く上であなたが大切だと思うことを、今までの経験を踏まえて述べなさい。(平成25年)
・あなたの能力、人柄を自己分析・評価し、東京消防庁でどのように活かしていくかを述べなさい。(平成24年)